第12章 その人は
「快気祝い」などと言う名目で、たまたま帰り時刻が重なったイルカ先生に声を掛けた。何かご馳走しようと思っていたところ、彼がラーメンを希望したのだ。
イルカ先生の好物は「一楽」のラーメンだそうで、すぐに行先が決まった。その後、イルカ先生を探して転がるように駆けてきたナルト君も誘い、このささやかな食事会が始まった。
イルカ先生が大怪我をして木ノ葉病院に入院していたのは、ひと月程前のことで、実際そうしようと思ってから、かなりの月日が経っている。
その間に、下忍合格者の説明会やら、各班員のバランス調整、新しいアカデミー生たちの授業にと対応する内に、あっという間に時が過ぎた。
ナルト君も、新たな上忍の先生や仲間たちと任務に赴いている。
「へい、お待ち」
私たちの前にそれぞれ注文したラーメンが置かれた。丼から湯気が上がり、美味しそうな匂いが漂う。
「待ってましたぁ。旨そう!」
「いただきます」
麺をすする音がしばらく聞こえた後、ナルト君が矢継ぎ早に、最近の出来事について話し出した。
「でさ、でさ。その猫がまたすばしっこくて……」
「……最後は、俺が捕まえたんだってばよ」
身振り手振りを交えながら、ナルト君の話が続く。イルカ先生と私は、ラーメンスープを飲みながらその話を聞いていた。
ナルト君が煮玉子を頬張っているとき、イルカ先生が尋ねた。
「なあ。担当上忍のカカシさんとはどうだ?上手くやってるか?班の皆とも仲良くやれてるか」
それを聞いて、ナルト君は顔をしかめた。
「うーん、まぁ。サクラちゃんはいいとして、サスケがなぁ。それにカカシ先生って、めっちゃくちゃ遅刻魔なんだってばよ」
「もう、サクラちゃんとサスケとで何時間も待っててさ。先生が遅刻って、納得出来ねぇ」
玉子を飲み込み、ナルト君は腕を組む。
そして、ブツブツと文句を言い始めた。長話になりそうで少し身構える。
「へ、へえ。上忍の先生って色々な人がいるんだね」
私は、そう相槌を打った。