第12章 その人は
お客が出たり入ったり、店主のテウチさんの通りのいい声が響く店内。麺を茹でる鍋から蒸気が立ち上っているのが、座っているカウンター席から見える。
ここは、「ラーメン一楽」。
木ノ葉隠れの里の、一番人気と言ってもいいラーメン屋さんだ。
「何にしよっかなぁ」
隣に座ったナルト君が、椅子から腰を浮かせて壁に貼られたメニュー表を見ている。そのまた隣にいるイルカ先生も、同じように壁側に目を向ける。
「何でも好きなもの頼んでね。今日は、イルカ先生の快気祝いも兼ねてるから」
「やったぁ!じゃあ、じゃあ。俺は、とんこつ味噌チャーシュー大盛りで!へへ、煮玉子もつけてもらおうっと!」
ナルト君が満面の笑みで、テウチさんに注文している。
「こら、ナルト!お前、少しは遠慮というものをだな……」
イルカ先生が驚いて、ナルト君を見る。何だかお説教が始まりそうな勢いだったので、ひょいと顔を覗かせてイルカ先生に声をかけた。
「いいんですよ。随分経ってしまいましたけど……。あの、イルカ先生も遠慮なく」
「いやぁ、そう言われましても……」
イルカ先生は、尚も恐縮して首を縮めている。困ったような顔をしている彼に、微笑みかける。
「私もラーメン食べるの久しぶりで、楽しみにしてたんです。ぜひぜひ」
「はあ、じゃあ。お言葉に甘えて……」
イルカ先生は照れ臭そうに笑い、ナルト君と同じとんこつ味噌チャーシューメンを注文した。私は塩ラーメンを頼む。