第11章 風の噂
すぐにでも会わなくなるのではと思っていたが、実際のところ、先輩は度々待機所などに顔を出していて、あまり実感はなかった。
「僕は結構しごかれることが多かったんで、少しほっとしてますけど」
これまでを振り返り、思わずぼやきとも言える一言が出た。その言葉に彼が笑う。
「またまた。お前が一番カカシさんと付き合いが長いじゃないか。一度暗部を離れたら、もう戻ることは少ないと思うぜ。今の内に顔を拝んでおかないと」
彼はどうも、僕を気遣ってくれたようだった。それに気づいて、少し前に居酒屋で話したとき、この先いつかはとぼんやりと考えていたのを思い出した。
カカシ先輩とは、少年期から今まで同じ暗部で切磋琢磨した関係だ。その人柄や技の見事さに、尊敬の念を抱き追いかけてきた存在でもある。ぽっかりと、胸に穴が開くような感覚が生まれていたのは事実だった。
「大袈裟な。神様でもあるまいし」
「はは、冗談だよ。でも、すごい人だったからな。どんな班になるのか、お前も気になるだろ?」
彼は陽気に笑った後、視線を上げて思案し始めた。
確かにあれだけ不合格者を出した、彼自身が受け持つ班だ。一体どんな子たちなんだろうと興味が湧いてくる。
「そうですね。それについては、僕も気になるところです」
「なぁ。注目の的だと思うぜ。あの『写輪眼のカカシ』が認めた奴らだ。もしかしたら、優秀な一族かもしれないな。一度お目にかかってみたいもんだ」
「まあ、しばらくは無理でしょうね。僕らとは訪れる場所が違う」
下忍が担当する任務は、忍の機動力を生かした、と言っても、難易度の低いものだ。依頼は探し物や農家の手伝いなど長閑なものである。要人の護衛や危険人物の監視などであれば別だが、僕たちが顔を合わせるということは皆無に等しかった。
「ああ、でもそうか…。この先、中忍試験がありますよ。その時なら実力のほどを見る機会もあるかもしれませんね」
護衛などと思案を巡らせていて気が付く。
そう僕が言うと、彼も納得したように手を打った。
「そうか!それがあったか。あの試験では、他里の長も来る。俺たちも周辺の警護に当たるしな。これから目にするって、可能性はある訳だ」
「ええ。まぁ、タイミング良く見られるかどうかは、分かりませんけどね」
その機会があれば、見てみたい気持ちは十分にあった。