第11章 風の噂
「テンゾウ。お前、カカシさんの話聞いたか?」
「何のことですか?」
以前携わった、クーデターの一件。
僕はカカシ先輩を隊長にした任務についた。内容は、小規模なクーデターの鎮静化、当事者の捕縛だった。関わった雨隠れの里の忍を拘束し、木ノ葉隠れの里の情報部に引き渡している。
情報部は、情報開示のためのテクニックに長けた忍の集まりで、拘束した者たちの尋問なども行う。
そこで原因究明のため、情報を聞き出してもらおうと捕縛した忍数名を預けていた。拘束後半月ほど経つが、彼らの口は堅く、未だクーデターが起こった理由についてははっきりとしていない。
現在カカシ先輩はこの任を降り、僕を含む三人の暗部が引き継いでいる。今日担当だった僕が、進捗を確認して情報部を後にしたときだった。
その時同じ班だった、暗部の一人に声をかけられたのだ。
彼は、カカシ先輩の下忍選抜について、その後の噂を聞いたらしい。とうとう先輩は自分の班を持つに至ったと教えてくれた。
まだ選抜が続いていた頃は、もう実質暗部ではないカカシ先輩が隊長となり、共に任務をこなすこともあった。だが、ここ最近はとんと見かけない。それでその理由に納得した。
「ああ、それで……。最近、カカシ先輩を見かけないなと思ってたところです」
「つい先日だったか、何やら三人、子供を引き連れて歩いてたのを見かけたよ」
丑(うし)の仮面をつけたその人の声は、少し楽し気だった。まだ彼は話し足りない様子でいたから、通路で立ち話をするわけにもいかず、暗部専用の待機所へと移動した。僕もまた、面を着けたままでいる。
*
「テンゾウ。さみしくなるな」
待機所の扉を開けてすぐ、彼がぽつりと呟いた。急に声色が変わったことに驚く。
「え?何言ってるんですか。カカシ先輩が暗部を離れてから、随分経ちますよ。正規部隊に移るって話があってから、送別会みたいなものもやりましたよね」
三代目からの要請で、当時暗部だったカカシ先輩が正規部隊へ異動になった。それを耳にしたとき、世話になった暗部の忍たちが集まって、労いの宴を開いたのだ。