第1章 出会い
ここは木ノ葉隠れの里。
ある休日の昼下がり、私は木ノ葉茶通りにある、小さな文具店にいた。
この店は、ノートや鉛筆といったものから、巻物や和紙、筆などもある品揃えの良いところで、気に入ってよく利用している。
私はアカデミーの教師で、今年で三年目になる。
クラスの生徒それぞれの個性を把握するのに、様々な事柄をノートに書き記していた。彼女たちの得意分野や苦手な分野、好きなもの、嫌いなもの、その他特徴や家族構成などをしっかりと覚えるためだ。
自宅には、これまでの軌跡とも言えるノートが十何冊もあり、今年もまた、新たな生徒を迎える準備にとノートを買い足しにきたのだ。
(うーん、どれにしよう…)
目の前の棚には、様々なサイズやデザインのノートが並ぶ。
教師になりたての頃は、桜色や山吹色など優しい色合いの表紙や、中も小花模様や動物柄をあしらった可愛いデザインのノートを選んでいた。
けれど今では、品質と書き心地が大事と、薄茶色の表紙の分厚いノートばかり使っている。
左手にいつものノートを持ち、右手に空色の表紙のものを手に取る。実用重視のデザイン一択、というのもどうかとふと思ったとき、パッと綺麗な色のノートが目に入ったのだ。それを片手に迷っていた。
ノートの棚の前に立ったまま、数分考え込んでいると、隣から声が降ってきた。
「…そのノート、いいですよね。僕もよく使ってます」
人の気配などなかったはずだ。
三十坪程の店内には、所狭しと文具や画材が並ぶ。私がお店に入ったとき、たまたま自分しかお客がいなかった。だから、こうして商品棚を陣取っていたのだけれど。