第10章 靄がかかった真実
さくらんぼはいつもの屋上にいた。ドアを開けると少し嬉しそうに振り向いた
「空閑君!」
遊真はそんな彼女に一つ笑いかけながら隣に座った
「ここ最近、屋上に来ませんでしたね。何かあったんです?」
遊真「あー…はっきり言っちゃうと避けてた」
「え?」
遊真「元々お前の居場所だったみたいだったし、邪魔するのもどうかなって。どうせ気まずくなるだろうし」
「そんな、私は楽しいですよ。まだ新玉狛に慣れてない分こうやって話せる人材は私にとって貴重ですし。
あ、今日はモフらせて下さい」
遊真「はいはい」
最近このように動物のように頭を撫でられる。ペットのように扱われるのは少し癪だが本人が落ち着いているのならそれでいい。
遊真「撫でられたのは久振りだな」
「誰が最後?」
遊真「多分…迅さん」
「迅兄…(汗」
遊真「でも、やっぱり親にされたのが一番よく残ってるよ」
「……空閑君の親は確か…」
遊真「亡くなってる」
「そうですか…私とおんなじ……」
こんな共通点なんてこの場の雰囲気をお通夜モードにさせるだけだ
「でも、死んでよかったって思う自分もいます」
遊真「?」
「あの人、私を訳も分からないまま監禁したんです」
遊真「…」
「子供の頃の私は…パニックで…
だって、今まであんなに優しかった父親が…私を遠ざけるようなことをするなんて…信じられなくて
あの人は悪魔に身体を乗っ取られたんだ。そうやって、暗い牢獄の中で自分に言い聞かせてた。
今は…勿論その理由も分かっています」
遊真「…それは?」
「私が
黒トリガー使いだったから」
そう言ってさくらんぼは自分の手に嵌めてあるグローブを外した。
右手は義手のように蒼白く温かみがない。うっすらと見える血管は黒く、振動していた
「不気味でしょう?」
遊真「…」
「同じ黒トリガー使いとして、空閑君なら話してもいいと思って」
さくらんぼの手の中にあるものは、今まで見てきた黒トリガーとは髄を抜いて異質な物だった。まるで、何かの禁忌に触れてしまったような…
遊真「…さくらんぼ、
お前の子供時代ってどんなのだったんだ?」
「…」
遊真「記憶にある事、全部話して欲しい」