第6章 USJ
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「個性を消せる。素敵だけどなんてことはないね───圧倒的な力の前ではつまり、ただの”無個性”だもの」
怪人・脳無。
脳みそが剥き出しの、不気味な黒い体格の怪物。
小枝でも折るかのように…‼︎
身体の一部でも見れば消せる…!つまり、
「素の力がこれか!」
ゴッ
脳無は、その類い稀なる体格で相澤を組み敷くと、木の幹よりも太いその腕で鷲掴みにした相澤の頭を地面に叩きつけた。
「離しなよ、『もどき』が」
低く這うような声。
ドガっという鈍い音がして脳無の体は衝撃波と共に巻き上がった白煙で見えなくなった。
「なんだ…⁈脳無‼︎」
手の男こと死柄木弔が、首元をガシガシと掻きながら声を荒げる。
その酷く荒れた青白い手に、チクリと痛みが走った。
白煙が晴れて、相澤から飛び退いて後退した脳無が見えるようになった。
「ハハ、加減しなかったのに…無傷は傷つくなァ」
「お前…、」
死柄木は改めてエマの姿を認識し、何かを言い淀んだ。
エマは、おそらく気絶した相澤に近づくと彼にそっと手を翳した。
「本当は、体育祭までは隠しておきたかったんだけれど。」
すると相澤の体を青白い光が覆い、ドームのように包んだ。
ーーー
「みんな、大丈夫⁈」
尾白猿夫は、とても誠実な男だ。
エマとの約束を果たし、入り口に待機していた麗日や瀬呂たちと合流した。
「尾白くん‼︎」
「詳しくは俺も聞いてないんだけど、癒守さんが…‼︎」
尾白の手には、血液の入った容器が握られていた。
尾白は、自身のダークホールで背中のスーツに大きく穴の空いた13号に駆け寄ると、それを待ち侘びたように容器の中の血液が無くなっていった。
そして13号の身体にも、相澤を包んだそれと同じ光がドーム状になって覆った。