第6章 USJ
「君、裏切った?」
おはよう、といつも言っているのと変わらない平坦な声だった。
「何を言って…?」
「…うん、違うならいんだ。いや君は違うかな。」
「自己完結しないで説明してくれ!俺にはなんだか…」
急に向けられていた敵意が緩んで、足の力が抜けた。
危うく崩れそうなところを、なんとか尻尾で持ち堪える。
「約束通り、最初の質問に答えようかな。
職員室に応援を呼びに行くのが悪手な理由はね、ここ火災ゾーンが入口から遠いことと、私と君の個性がそれに向いてないからだよ。
特に私はね。この中で戦闘不能になった人を復帰させて時間を稼げるのは私だけ。広場に残ってる人が行くのが一番近いし、飯田くん辺りが行けば尚よし。」
薄々思っていたが、彼女は相当頭がキレる。
ここは指示を仰いで従うのが賢明かもしれない。
「じゃあ裏切り者って?」
「そう‼︎それが一番の問題なんだよ尾白くん。」
急に理解者を得たオタクというか…目をキラキラさせてこちらを見る癒守さん。
「残念なことに、きっと生徒…それも一年生だろうと思って。でも、君は違うかな。
ここにいる敵の誰も、私の個性を知らなかったみたいだけど、尾白くんには戦闘訓練の時に教えたからね。」
「ど、どうして生徒だって…」
「黒い靄の人が言った、頂いた教師カリキュラム。先生なら雄英のバリケードを壊さなくても持ち出せる。
それに生徒側の個性を共有できてない。最近会ったばかりの同級生の個性は分からなくて当然。でも先生は入学時に提出した個性届を見れる。」
「そんな‼︎」
「でもね…考えてもきっと無駄なんだ。頭を絞り切ったら結論に辿り着けるとしても、現状の打開には繋がらないから。」
「なら…、なら俺はどうすればいい?
今決めたよ。癒守さんの指示に従う」
「それは僥倖。好きな方を選んでよ。
ーークラスメートを信用して広場の主犯格を抑えるか、飛ばされたクラスメートの加勢に回るか」