第6章 USJ
尾白猿夫は、自分の感情が迷子になっていた。
よくヤンキーものの映画や漫画で、ちぎっては投げちぎっては投げ…と聞くが、投げるは兎も角ちぎるはよく分からないし、こんな言葉を日常生活で使う機会はほとんどない。
そう思っていた。
「ふぅ…これで最後かな。」
─────USJ、その火災ゾーンである。
メラメラと燃え盛る炎の中に、人の山。
その頂上に腰掛けるは、最早女帝である。
黒い靄のようなものに覆われてすぐ、俺と癒守さんはここに飛ばされた。
地面で待つ敵たち。ざっと数えても50はいそうだ。
「尾白くん、安全に注意して降りてきてね」
そう言って、空中に結界の足場を作り出してあの怪力で蹴って加速。着地と同時に隕石を疑うクレーターを作り出した拳。
それで敵の大半はクレーターの穴埋めに使われた。
残りの数人もすぐに山の建設に使われた。
俺が着地して、癒守さんの背後を奇襲しようとしていた(これもきっと気付いていた)、全身に鉄針を生やしたハリネズミのような敵を尻尾で殴り気絶させた。
癒守さんは満足そうに、「ナイスだよ尾白くん」と言った。
「これからどうしようかな…。」
と、敵の体で築いた山の頂上に腰掛けて考え出したのが今現在である。
「尾白くん、座らないの?」
「いや、俺は遠慮するよ…、職員室に助けを呼びに行くのが最適じゃないかな」
「うーん…その択はナシかな。」
「え、どうして?」
「その前に尾白くん、ひとつ答えて欲しいんだけど」
さっきまで、どこか遠くを見つめていた目がすっと俺の目に合わせてきた。
いつもと違う、まるで敵に向けるような…そんな冷たい目を向けられて、呼吸が止まったような錯覚を覚える。
暫くして、彼女が腰掛けながらも、俺に臨戦体制を取っていることに気付いた。
「君、裏切った?」
───────…