第5章 しみずくん
「ご飯も食べ終わったし、おふろはいる?」
2人で作ったご飯を食べ終え、清水くんが言った。入らないとも言えないので入ることにしよう。
「うん。はいりたいな」
「わかった。沸かしてくるね」
そう言って清水くんはリビングを後にした。途端に私は1人になる。この一瞬でいろんなことを考えてしまって嫌になる。雅哉のことたま頭がいっぱいだ。
「すぐ沸くと思うから、それまでゆっくりしてて」
「ありがとう。ほんとごめんね迷惑かけちゃって」
今更ながら申し訳なくなった。優しさに甘えて、泊まらせてもらっちゃって。鬱陶しいにも程がある。
「気にしないでよ。僕が呼びたくて呼んだんだから」
私に優しい笑顔を向ける。いま、心の奥できゅんってなった気がした。締め付けられて、どきどきしてるそんな感覚。
「ひとつ聞いてもいい?」
「うん。いいよ」
___雅哉くんと何があったの?
少しの静寂。私には痛いくらい突き刺さった。
「何も無いよ」
「ねえ、誤魔化さないで。言って?」
やっぱり見透かされている。嘘なんか着いても意味は無い気がする。ただ問い詰められるだけ。それならいっその事正直になる方がマシだ。
「雅哉が、他の女の子と一緒にいるとこ見て、悲しかったの」
「うん」
「私だって、雅哉とそーゆうこと、いっぱいしたのに」
親身になって聞いてくれる清水くん。こうなったら私は止まらない。次々に言葉が出てきて、声も涙ぐむ。
「散々ね、離れないでとか言ってきたのに。ほんとひどい………」
「つまり早織さんは雅哉くんのことが好きなんだね」
雅哉のことが好きなんて事は絶対にない。むしろ嫌いなはず。いっぱい酷いことされて、怖いって思ってるのに。
「そんなわけないよ。雅哉は私のお兄ちゃんだもん」
「うーうん。そんなわけあるよ?僕にはわかる」
すき…………すき、なの?もう全部わかんない。雅哉のことなんて何も考えたくないよ。