• テキストサイズ

fou d’amour

第5章 しみずくん


「悪くないね」

「え?」

ゆっくり上から下まで品定めするみたいに見て、呟くみたいに言った。

「よし、ご飯作ろ。具材切ってもらっていい?」

そんな変な雰囲気から一転、いつもの調子に戻る清水くん。

「わかった。任せて」

と、包丁を持ったものの使い方なんて分からなくて上手く切れない。日頃から料理するべきだったと後悔する。

「ははっ。永宮さん普段料理しないタイプ?」

「うん。まったくしない」

「なんか意外だね。勝手に料理好きかと思ってた」

なんか遠回しにバカにされてる気がするんだけど、気のせいだと思いたい。

「お菓子とか、包丁使わないのならできるよ?」

「ほんとに?じゃあ今度作ってきてよ」

お菓子と言っても生チョコとか簡単なのしか作れないけど。計量が難しいのは失敗しちゃう。

「切り方これで合ってる?」

「永宮さんそれ輪切りだよ」

「え、そうなの」

乱切りにして欲しいって頼まれて、うろ覚えな知識で頑張ったけど違ったみたい。

「こうやって切るの」

ふわって後ろから手を添えられた。気づいた時には身体を覆うようにして立っていた。清水くんもやっぱり男の子で、手だってごつごつしてるし、身体だって大きい。不覚にもドキドキしてしまう。

「わかった?」

「んえ?あ、わ、わかった!」

「分かってなさそう」

もちろん、レクチャーなんて頭にはいるわけない。それどころじゃないもん。

なんかもう、この時間が楽しくて。こんな一緒に料理作るとか初めてで。

「なんか、この感じ楽しい」

「僕も思った。あと同棲ってこんな感じなんだろうなって考えちゃった」

同棲って言葉に意識してしまって、顔が熱くなるのを感じた。
/ 63ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp