第5章 しみずくん
「悪くないね」
「え?」
ゆっくり上から下まで品定めするみたいに見て、呟くみたいに言った。
「よし、ご飯作ろ。具材切ってもらっていい?」
そんな変な雰囲気から一転、いつもの調子に戻る清水くん。
「わかった。任せて」
と、包丁を持ったものの使い方なんて分からなくて上手く切れない。日頃から料理するべきだったと後悔する。
「ははっ。永宮さん普段料理しないタイプ?」
「うん。まったくしない」
「なんか意外だね。勝手に料理好きかと思ってた」
なんか遠回しにバカにされてる気がするんだけど、気のせいだと思いたい。
「お菓子とか、包丁使わないのならできるよ?」
「ほんとに?じゃあ今度作ってきてよ」
お菓子と言っても生チョコとか簡単なのしか作れないけど。計量が難しいのは失敗しちゃう。
「切り方これで合ってる?」
「永宮さんそれ輪切りだよ」
「え、そうなの」
乱切りにして欲しいって頼まれて、うろ覚えな知識で頑張ったけど違ったみたい。
「こうやって切るの」
ふわって後ろから手を添えられた。気づいた時には身体を覆うようにして立っていた。清水くんもやっぱり男の子で、手だってごつごつしてるし、身体だって大きい。不覚にもドキドキしてしまう。
「わかった?」
「んえ?あ、わ、わかった!」
「分かってなさそう」
もちろん、レクチャーなんて頭にはいるわけない。それどころじゃないもん。
なんかもう、この時間が楽しくて。こんな一緒に料理作るとか初めてで。
「なんか、この感じ楽しい」
「僕も思った。あと同棲ってこんな感じなんだろうなって考えちゃった」
同棲って言葉に意識してしまって、顔が熱くなるのを感じた。