第3章 犯した過ち
「自分で乾かせるから大丈夫」
「たまにはいいでしょ」
私の言葉を聞こうともしない。このままじゃバレてしまう。首に付けられたマークを見られちゃう。きっと、すごい怒られるに違いない。何されるかも分からない。
「ほんとに、いいから」
「なんで?」
多分、雅哉は何言っても引かない。もしろ拒否したら余計に怪しまれてしまう。上手く隠すしか方法は無さそう。
「逆になんでそんなに私の髪乾かしたいの?」
「気分」
もう、何も言えない。無駄な気がしてきたから。私が黙っているのを見て雅哉はドライヤーを手に取った。
優しい手つきで髪を乾かす。気持ちよくて眠くなってくる。ずっとこういう関係が続けばいいのに。
「はい。乾かし終わった」
「んぅ…………、ありがとう」
この感じだと、首筋のマークは気づかれてないみたいだ。心底安心した。と思ったのもつかの間、やっぱり油断なんてできなかった。
「俺が気づかないとでも思った?」
後ろから、いつもにまして低い声が聞こえた。耳元で教え込むみたいに怖く呟く。私は目の前が一気に暗くなった。
「これ、俺が着けたやつじゃない」
「え?」
わざと、印が見えるように髪の毛を退けた。目の前の鏡に写っている私の首筋を指でなぞる。
「なにこれ?」
「ち、ちがくてこれは…………!」
「ふざけてんだろお前。俺にバレたら酷い事されるって知ってたくせに」
分かってたよ。分かってたけど、嫌だったの。雅哉は私以外のことそういうことしてるのに、私は誰ともしてないから。それがすごく、いやだった。
「ムカつく。早織のくせに」
途端、私のお腹に腕を回して首筋に小さなキスを何度も落とす。
「やっ、………………ぁっ、」
鏡に映る顔を赤らめてる自分を見たくなくて目を瞑った。そのせいで余計に感度が高まってしまって、首だけなのに声が漏れてしまう。