第3章 犯した過ち
「飯あるけど食う?」
案外普通に接してきて安心してしまう。あんなに気にかけること無かったのかもしれない。
「ううん。食べてきたから大丈夫」
食べてないけど、食欲なんか湧くはずも無い。
とにかく今は歯を磨きたい。あの不快感を消したかった。トイレに行くふりをして洗面所へと向かった。雅哉の顔は見れそうにない。
ごしごし歯を磨く。1回じゃ足りなくて、何回も何回も磨いた。だけどあの感覚は消えそうにない。
リビングに戻ると、雅哉はソファーに座ってテレビを見ていた。居た堪れない空気が流れている。その場にいるのは耐えられなくてお風呂に入ることにした。
「お風呂入ってくる………ね」
いちおう一言こえをかけるけど、雅哉は聞こえないふりをしてるのか見向きもしない。
もっと干渉してくるかと思ってたから少しびっくりしてる自分がいた。
***
お風呂の鏡で自分の身体を見た。すると赤い跡がいくつもあった。彼が言ってたやつだ。首とお腹。それによく見ると足の付け根にも付けられている。
これが雅哉にバレたらどうなってただろう。なんとしてでも隠さなきゃと思った。身体をいつもより念入りに洗った。少しはマシになると思ったから。
お風呂を出て、パジャマに着替えて髪を乾かそうとした。その時、ドアが空いて雅哉が洗面所に入ってきた。少しでもタイミングが悪かったら身体を見られていた。
「雅哉?」
「髪、乾かすよ」
ドライヤーを手に持って、私の髪を乾かそうとする。おかしい。いつもならこんな事しないし優しくない。絶対になにかある。