第2章 教えてあげる
「ただいま」
「おかえりなさい2人とも」
今日は珍しくお母さんがいた。そういえば仕事休みって言ってたっけとぼんやり思った。
「ねえ早織?家庭教師雇う?」
「家庭教師?」
「うん。塾も考えたんだけど、ここら辺ないし送り迎えも大変でしょ?だから家庭教師が妥当かなって思ったんだけど」
お母さんは数枚のチラシを見比べながら私に言った。確かに、もう私1人じゃどうしようも無いから他の人の手を借りるのもありかもしれないと思った。
「いいかも。家庭教師」
「そうでしょ?じゃあ今度電話してみるね」
「お母さん」
「なあに雅哉くん?」
急に雅哉が口を開いた。
「僕が早織に勉強教えますよ。家庭教師って金銭的にも面倒ですよね。僕が教えればお金も浮きますし」
「でも、雅哉くんに迷惑じゃない?自分の勉強に集中できないでしょ?」
頼むお母さん。なんとしてでも阻止してもらいたい。
「いいえ。自分の復習にもなるし。僕も一緒に勉強できるので全然苦じゃないですよ」
「そう?じゃあお願いしちゃおうかしら…………」
雅哉はやってやったぜという顔をしている。
あぁ、終わった。ここで嫌だなんて言ったら、また昨日みたいなことされる。
「早織。今日から雅哉くんに勉強教えて貰うのよ」
「…………はい」
私は頷くしか選択肢はなかった。