第3章 守る決意
杏「俺の耳のせいなのだから、俺が筆談用に用意しておくべきだった。帰ったら用意しよう!今まで気付かずすまなかった!」
「杏寿郎くんは優しいなあ。さっきまでは怖かったけど。」
そうして意思の疎通が困難になってしまった二人は、なるべく急いで家路を辿ったのだった。
———
杏「只今帰りました!!」
「ただ今…帰りました?で良いのかな…。」
その声に先日同様、千寿郎が駆けてくる。
(いつも待ってるつもりなのかな…。炎柱様はまだ任務なのかな…。)
杏「つむぎ!聞きたい事があるので人心地が付いたら部屋に来てくれ!」
「……うん。」
つむぎは首を傾げながら頷くと、千寿郎に視線を落とした。
「杏寿郎くんって少し気難しいところありますよね…不機嫌になるとなかなか戻ってくれないし…。」
それを聞いた千寿郎は目を丸くした。
千「兄上が、ですか…?」
「え゙…もしかして珍しいんですか…?私何しちゃったんだろう……。」
杏寿郎はそう言って頭を抱えたまま座り込んだつむぎを見下ろして目を細めた。
杏「待っているからな。」
「………はぃ……。」
そうしてつむぎは叱られた子供のような表情を杏寿郎に向けたのだった。