第5章 ※逆鱗
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一方、杏寿郎の病室では重い空気の中で蜜璃が泣きそうになっていた。
蜜(うう…どうするのが正解だったのかしら…。)
そんな蜜璃が見つめる先の杏寿郎は額に青筋を浮かべている。
杏(甘露寺が髪紐を見付けた場所は行き止まりの筈だ。向かわせた胡蝶も戻ってこない。やはりつむぎの身に何かあったのでは…、)
し「失礼します。」
戸の向こうから待ち望んだ声がすると、杏寿郎は思わず飛び起きた。
杏「胡蝶!!どうだった!!!」
蜜「し、師範!寝てなきゃ…!」
しのぶは戸を開き、にこにことしながらベッドまで歩いてきた。
し「まずは寝て下さい。そうしたら話します。」
それを聞いた杏寿郎は慌てて横になった。
杏「すまなかった!教えてくれ!!」
その必死さを見たしのぶは少し眉尻を下げた。
し「つむぎさんは…、」
———『杏寿郎くんにだけは知られたくありません。』
し「……丁度ふらふら歩いてるところを保護しました。屋敷を一通り見て回っていたそうですよ。」
杏「ただ見て回っていただけではないだろう。甘露寺が髪紐を見付けた場所から察するに、つむぎはどこかの病室に入っている。ここへ連れてきてくれ。何かを隠して」
し「帰しました。」
しのぶの言葉に杏寿郎が固まる。