第4章 告げる
「……深澤さんにはリボン返してくるよ。」
杏「俺も行こう!まだ日が沈んでからそう経っていない!今から行っても問題はないだろう!!」
「えっ、待っ」
杏「待たない!!もう君は俺を受け入れたのだから口説いてきた男とはすぐ縁を切ってもらう!!行くぞ!どちらの街だ!!」
「で、でも」
杏「どちらだ!!!」
杏寿郎の有言実行力はつむぎがよく知っている。
それ故に観念したように腕を上げて北を差した。
杏「うむ!ありがとう!!では行くぞ!!」
「もう…。」
つむぎはそう言いながらリボンを拾おうと屈んだ。
すると触れる前に杏寿郎が後ろからヒョイと取り上げてしまう。
「杏寿郎くん…?貰ったのは私なんだし私が返すよ。」
杏「………。」
杏寿郎は無言でリボンの匂いを嗅ぎ、眉を顰めるとつむぎの顔を前に向かせ、その後頭部に顔を埋めた。
「え…何してるの…?」
つむぎが振り返ると杏寿郎はリボンを隊服のポケットに仕舞った。
杏「リボンに付いていた香が髪に移っている。帰ったら念入りに洗ってくれ。」
その声の低さにつむぎは少しぞくりとしてしまった。
「……うん…分かった。」
そうしてつむぎはリボンを返してもらえず、任務地であった林を後にしたのだった。