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【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】

第5章 「元整備士」×「ポルシェ356A」


背負っている責任の重さから不意に、自分達がただの普通の一般人であることを忘れてしまう。

萩原くんも諸伏くんも、伊達くんも――――松田くんも、本当に皆死んじゃったのかな。

実感が湧かない。ただ巡り合えてないだけで、連絡をしないだけで。電話一本かければ、すぐにでも松田くんが電話に出て、愚痴を永遠と聞かされて、勝手に家に上がられ挙句の果てには徹夜して作った部品を勝手に改造されるただの何でもない日がまた来るんじゃないかと思ってしまう。

「少し揺れるかもしれないが我慢してくれ」

車がゆっくりと発信する。
点滅するウィンカーに自然と目線が行くと、ふと車内にあるあるものが目に止まった。

「シガーライターなんて珍しいですね。ヘビースモーカーですか?」
「よく知ってるな、君もタバコを吸うのか?」

目に止まったのは、今どき珍しい主に車に装備される電熱式のタバコの着火装置。
こんな高級車でタバコなんて、相当脳みそがニコチンで犯されてる証拠だ。

「吸うわけないでしょ、あんな合法な麻薬」
「じゃあ嫌いか?」

テンポよく続く会話。唐突に聞かれた赤井さんの言葉に、少しだけ間が空いた。
あんな強い言い方をした癖に、少しだけ、答えに迷ってしまった。

「……………いいえ。……嫌いではないけど、好きではない」

窓の外を見ながら言う。

「では今吸っても? 今日はまだ吸えてなくてな」
「どうぞ」

そう答えると、会話のないエンジン音だけが響く車内にタバコの副流煙が漂った。
自然と嫌という感情が生まれず、なぜかそれが懐かしいとさえ思ってしまう自分が情けなかった。



「君に証人保護プログラムを受けること薦めたい」

唐突に、まるで好きな食べ物でも聞くかのような軽い口調で赤井さんはそう言った。
外を見ていた目線を赤井さんへと向けた。さっきまで短くなっていた煙草がなぜか伸びていることはさておき、私は彼の質問に口を開いた。
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