【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
胸元と背中の開いたブルーのミニドレスに白のサイドレースと編み上げのリボンベルトの付いたピンヒール。サイドが編み込まれた巻き髪に濃いメイク。
香水、化粧品、バッグ、美容代、その他諸々。まさかこんな所で溜まった貰い物が役に立つなんて思いもしなかった。
あとから同僚から聞いた話、面接から店長は私に目を付けていたらしい。
他の子に比べてダイヤのような輝きは持っていないが、原石としての輝きは持っている。話も上手く、この子は今までにない新しい子になれる。夜に染っていない、まるでなんにも知らないアリスのようだと。
そこからアリスという名前は店長が私の源氏名として採用した。
「アリスちゃん指名入りました〜!」
「はぁ~い」
指名してくれた常連のお客さんをエレベーター前まで見送れば再び黒服の人から指名の知らせを受ける。
気づけば潜伏して一ヶ月、すっかりこのシステムに慣れてきたもののいい歳してキャバ嬢になるなんて誰が予想した。
実際最終的にやりますと言ったのは自分だけど、これも約一ヶ月前、新宿歌舞伎町のとあるキャバクラ店にあの国際的な大規模犯罪組織のひとりがいるという噂が警視庁の公安部に流れ込んできた。
年齢、性別、容姿不明。唯一の手がかりはこのキャバクラ店で見かけたと言うたったひとつの情報のみ。そこから警察官であることを隠して潜入する潜入捜査の案が会議で出ると話は問答無用でポンポンと進んで行った。
かなりの手慣れた人物なのか一ヶ月たった今でも情報はゼロ。毎日決まって退勤後にする降谷くんへの連絡は決まって『今日もそれらしい人も、怪しい行動もなし』と、機械的に吐き出す毎日だ。
指名された席へ移動すればそこには初めて見る顔の男性がいた。初回で指名なんて珍しい。
「初めまして、アリスです。指名ありがとうございます」
営業スマイルと高らかな声をで愛嬌を振り撒きながら名刺を渡すのももう手馴れたものだ。「隣に座っても?」と聞けばキャスケット帽を深く被っているその男性は短く返事をした。