【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第5章 「元整備士」×「ポルシェ356A」
私がいない間、負担はもちろん皆へ分散される。部屋に居ながらできることはやるから書類を送って欲しい…と言いたいところだが、生憎他国のFBIが護衛中の為機密事項を含んでいる書類は手の打ちようがなく、結局私は仕事にはなにも手を付けないまま一ヶ月後を迎えた。
「傷は、少し残るでしょうが今日で完治です。ですが激しい運動やあまり強い刺激を与えないように」
「わかりました。ご迷惑をおかけしてすみません」
最後の検診が終わり、付き添いであるジョディさんと診察室を出る。
病院の出入り口へ差し掛かかった頃、ジョディさんのヒールの音がカツンッと止んだ。
「それで、決まったの?」
先へ行こうと歩き出す私とは反対に突然立ち止まり腕を組むジョディさんに私は不意に足を止めた。
その言葉の意味は、もちろん分かっている。
〝証人保護プログラム〟
報復措置から身辺を保護するための制度。それはある意味、身元、名前を変え全く新しい人物として生きること。
しかし全員が善良な市民というわけではない。噂を聞けば犯罪者や大半を占めていると言う。
「最初から、決まってますよ。だって私は、この国を守るために彼と約束したんですから」
そう言えばジョディさんは「そう…」と深く瞬きをした。
「まぁ、私も病院に着く前から聞かなくても分かっていたわ。あの白い車を見た時からね」
ジョディさんの視線は病院の出入り口前の送迎用道路、そこには平日の昼間であるにも関わらず一台のスポーツカーが止まっていた。
「困ったことがあったら、いつでも呼んで頂戴。私達はいつでもあなたの味方よ」
「ありがとうございます。本当にお世話になりました」
私は深々とジョディさんに頭を下げると降谷くんが待っているRX-7へ走り向かった。
到着する前に事前に開かれた助手席から乗り込むと同時にシートベルトをかける。
「傷はどうだって」
「痕は残るみたいですけど、強い衝撃とか激しい運動をしなければある程度は」
そう答えると降谷くんが後ろから紙袋を持って膝の上に置かれる。中には報告書であろう書類の束とジャケットと新しく調達された無線のイヤホンに拳銃。あの時失くしていたすべてが揃っていた。