【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第5章 「元整備士」×「ポルシェ356A」
なにかこの後用事が立て込んでいるのか、案外すんなりと受け入れてくれたことに少しだけ驚いた。いつもなら質問攻め案件だ。
「…………無理はするな」
少しだけ間をおいて降谷くんはそう呟くと、手首を掴まれ手の平に置かれたのは新しいスマートフォンだった。
「何かあればすぐに駆け付ける」
そう言って降谷くんはドアを閉めるギリギリまで私を見届けると数秒してエンジン音が遠のいた。
ドアの閉まった瞬間、遠退いていくエンジン音が完全に聞こえなくなると私はホッ、と肩を撫でおろした。
「こ、怖かったぁ~」
「もぉ~、安室さん来るの早いよ~」
同時に隣から聞こえてくるコナンくんの声に私は「え?」と振り向けば、コナンくんが「えへへっ、実はお姉さんに言うの忘れてたんだけどね」と言葉を続けた。
「安室さんをここに呼んだのは僕なんだ。 混乱しないように赤井さんとも事前に打ち合わせしてから向かえる予定だったんだけど、安室さん予定より早く来るから僕びっくりしちゃったよ!」
「まあ、唯一の救いは君が物分かりが早くて助かったことかな」
「そう言えば、沖矢さんて安室さんに嫌われてませんか?」
「ははは、分かるか? 実は昔いろいろあってな。恨まれてるみたいだ」
「なぜです…?」
「さぁ? 交換条件でも構わないが」
「じゃあ大丈夫です」
苦笑いしながらそう答えると、隣からコナンくんの乾いた笑いがい聞こえた。
ロックのかかっていないスマートフォンを開けば、仕事の早いことでいつの間にか連絡先が登録されている状態だった。
残り三週間、私はこの大豪邸の工藤宅で赤井さんの護衛の下、療養生活が始まった。
煮込み料理が得意と言っていた沖矢さんの手作り料理を食べたり、たまに隣の阿笠さんの家へコナンくんと少年探偵団と呼ばれる小学生の子供たちと一緒にご飯を食べたり。
遊びに来た蘭ちゃんや園子ちゃんとそのお友達の真澄ちゃんとお菓子を食べながらお茶をしたり、療養生活にしては賑やかな生活だった。
データの消えてしまった沖矢さんとも連絡先を改めて交換し、同じ赤井さんの同僚であるジョディさんとキャメルさん、蘭ちゃんや園子ちゃん、真澄ちゃんとも連絡先を交換し時々蘭ちゃんからは心配のメールが届いた。