【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第5章 「元整備士」×「ポルシェ356A」
そのままされるがまま、シガーライターを押し付けられ慌てて煙草を手で押さえる。
煙草に火が付き煙が出始め、吸った煙でむせ返らない為ほんの少しだけ吸うと、苦くて生温かな空気が喉を通るのが分かった。
変な感じ。ただそれだけ。美味しいとも思えない。
ただその代わりに妙に脳裏にチラつくのは松田くんのことばかり。
「………やっぱり、煙草は嫌いです」
そう言って吸いかけのタバコを差し出せば赤井さんはそれを手に取り捨てるかと思いきや私の吸いかけだった煙草を吸い始めた。
海の向こうではこういうのも普通なのかなと、そんなことを思いながら目的の場所に着いたのはそんな会話を終えた後だった。
場所は米花町、住宅街の狭い路地へ入ると塀で囲まれた家によく似た英国風の一軒家が佇んでいる。まさかとは思ったが、そのまさかだ。門の前に車が止まる。門には〝工藤〟と表札がある。
「ここ、あの推理小説家の工藤優作さんの家じゃなないの?」
「そうだか? 何か問題でもあるか?」
問題大ありに決まってる。なぜわざわざ著名人の家で一ヶ月も過ごす理由が分からない。尚更目立つに決まってる。
赤井さんは何のためらいもなく門の前に車を止めると、運転席を出てまた前方から助手席へと回りドアを開けてを差し伸べてくる。まるでこれじゃここに一ヶ月住むみたいな流れでしかない。
ひとまず手を取ってゆっくりと立ち上がる。すると赤井さんの後に見覚えのある小さな男の子がいた。
「こんばんは! お姉さん、久しぶりだね!」
「……コナンくん?」
それはあの時、喫茶ポアロで毛利蘭ちゃんと一緒にいた今かの有名な眠りの小五郎こと、毛利探偵事務所に居候しているというコナンくんだった。
「どうしてコナンくんがここに?」
「僕、新一兄ちゃんと従兄弟なんだ! お父さんとお母さんも新一兄ちゃんも住んでないからだからお姉さんはなんにも気にしなくていいよ!」
「わざわざありがとう。それにコナンくんがあの高校生探偵の工藤新一くんの従兄弟だったなんて初耳だよ。……そう言われてからよく見ると、すごい……似て…………」
まじまじとコナンくんの顔を見つめていると「あ、……え?」と、目を泳がせながらコナンくんがどんどんと赤井さんの後ろへと隠れて行く。
「…………似すぎでは??」