第2章 初めての彼氏は…、
(会って数時間しかたってないのに…。もしそうなら私そうとう惚れやすいんじゃないかな…。確かに誠実そうな人だったし、とっても優しいし…とっても格好いいけど…。)
考えれば考えるほど杏寿郎の良い面しか浮かんでこない。
そうしてうんうんと唸っていたが、ハッとすると目を開いた。
(そもそも、もう恋人になっちゃってるんだから良い人で何よりじゃない。普通化けの皮が剥がれるのは恋人になってからだもの。何を悩んでいるんだろう…。)
そう思うとスマホを握ってこくりと喉を鳴らした。
———
一方、杏寿郎は唯一のこだわりだった広い湯船にたっぷりと浸かったばかりであった。
Tシャツにハーフパンツというラフな格好になると、そのまま冷蔵庫へ直行して冷たい水を飲む。
杏(りんさんも寝る支度を済ませた頃だろうか。)
ちらりとそんな事を思うと、頭にりんの赤い顔が浮かぶ。
杏寿郎はその姿を留めるように目を細めた。