第5章 華
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杏「起きていたのか。」
「杏寿郎さん…お帰りなさい。」
りんはこくりと頷くと、ソファにあったクッションを抱きしめて胸を隠す。
杏寿郎はその目に毒な仕草から目を逸らした。
杏「すぐ髪を乾かしてくる!もうベッドに入っていてくれ!」
「は、はい…。」
りんは杏寿郎の後ろ姿を見つめながら首を傾げた。
それから間もなくして髪を乾かし終えた杏寿郎がりんのいる寝室に入ってきた。
杏「……入るぞ。」
「はい…。」
こんな状況を作ったのは杏寿郎であったが、一番追い詰められているのも杏寿郎であった。
声を掛けた杏寿郎は掛け布団をめくり、りんの隣に入ると電気を消してから背を向けて横たわった。