第4章 誰のもの
杏(りんさんもいつか同じ気持ちになってくれるだろうか。焦っては駄目だ。彼女のペースを大事にしながら、俺を好きになってもらえるように尽力しよう。)
杏寿郎はそう思うのと同時に、週末にりんが自身の部屋に上がるかもしれない事を思い出した。
杏(彼女がその気でいるのなら恥をかかせる訳にはいかない。きちんと調べて準備をしておかねばならないな。)
そうして杏寿郎は女性の基本的な愛し方に留まらず、嗜好の診断の仕方、そしてそれぞれの愛し方まで勉強したのだった。
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(部長が出張で本当に良かった。)
翌日、りんは普段整理できない名簿をまとめながらほっと息をついていた。
(金曜までは時間があるし、次お会いする時にはきっとあの時の事なんか忘れて接する事ができるはず。)
実際、藤川から来る連絡は全て事務的なものであり、りんのそんな思いは強く固くなっていった。
それとは真逆に、杏寿郎とはメッセージを重ねれば重ねるほど距離が近付いた気がしたし、寄せる想いも大きくなっていった。