第1章 出会い
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りんは皆から遠ざかる方へ歩き始めてしまった為、駅とは反対方向に進んでいた。
それ故に手は少し汗ばんでいる。
(どうしてこんな事に…。ここまでしなくても躱せたのに。友達が見てなければこの人を巻き込んで男慣れしてるフリなんてしなくて済んだのに…。ううん、そもそも天元くんがこの人を寄越していなければ腕を掴んだりは…。)
そう、りんは恋愛経験豊富と思われているが、実のところは彼氏いない歴=年齢の恋愛ベタ女だったのだ。
それなのに勘違いされてしまったのには理由がある。
まず、天元の存在があったからだった。
二歳差の従兄妹で仲の良かった二人は小学生までは同じ学校に通ってよく一緒に過ごしていた。
それまでは良かったのだが、天元が中学に上がった頃、女避けで『彼女がいる。』と嘘を言い始めたのだ。
そして、りんが中学に上がってすぐの頃、天元と二人で歩いているところを双方の学生に見られてしまった。