第31章 耳掃除をしよう(春日山勢)
佐助「それは他人の耳掃除なんて俺も初めてだったから加減がわからなかったんだ。
舞さんは上手だからそんなことはないよ」
特性煙玉や現代の便利グッズを手作りしちゃう器用な佐助君でも、他人の耳掃除は苦手らしい。少し優越感に浸る。
「ふふ、男の人が耳掃除をしてあげるって、あまり聞かないよね。
さ、話はここまでにして幸村をやっつけちゃおう!」
幸村「やっつけるって何だよ!俺の耳にそれを刺すなよ!」
「つべこべ言ってないで、ジッとして!」
幸村「言ってねえ!」
「そんなに大興奮してたら耳掃除なんてできないでしょ?」
大興奮と聞いて信玄様と佐助君が吹き出し、幸村は顔を真っ赤にして文句を言っている。
仕方ないから頭をよしよししてあげると幸村は不貞腐れながらも大人しくなった。
頭を撫でる行為は、ここでも効果抜群のようだ。
信玄様と佐助君が笑いをこらえる中、幸村の耳たぶを掴んで中を覗いた。
「あれ…?」
耳かきを入れずに、見る角度を変えながら中を確かめる。
「幸村の耳ってネコ耳タイプだね。
せっかく寝っ転がってもらったけど、この耳かきだと掃除できないよ」
姿勢を戻してそう説明すると、幸村をはじめその場に居た面々が『ネコ耳?』と疑問符を浮かべている。
幸村「ネコ耳ってなんだよ?俺はれっきとした人間だぞ」
佐助「幸村、そういう意味じゃない。耳垢はカサカサに乾いている人と、湿り気のある柔らかい人と2つに分かれるんだ。
猫の耳はジメジメと湿っていることから人間でも耳垢が湿っていると、そう呼ばれることがある」
「日ノ本の人種ではどちらかというと少なめだけど、海の外では割と多いんだよ。
体質の問題だから湿ってても問題ないから安心してね」
幸村「ふーん」
幸村があいまいな返事をしている隣で佐助君が首を傾げた。
佐助「でもおかしいな…。この間掃除した時は幸村の耳は乾いていたけどな」
「え?この間乾いていたなら湿っているのは体質じゃなくない?」
会話についていけずに膝の上で視線を泳がせる幸村に、原因を尋ねてみた。
「お風呂に入ったとか?」
幸村「こんな時間に風呂に入るかよ」
常識を疑うような目で見られて口が尖がる。