第25章 耳掃除をしよう(安土勢)
膝が熱い。
正確に言うと光秀さんが頭を乗せているところが。
「光秀さん、熱があるんじゃないですか?」
おでこや首に触ると、あきらかに平熱ではない熱さがあった。
慌てて畳にぐちゃっと置かれていた掛け布団を引っ張った。
「もう、なんでまっすぐ御殿に帰らなかったんですか。
せめて自室で休むとかしてくださいよ」
光秀「信長様に報告があったのでな。
報告した後、自室に向かったつもりがお前の部屋だった」
「わけわかんないこと言わないでください」
もしかしたら任務先から直接登城して、寝ていないのかもしれない。
寝ぼけていたとか、熱があるからといって光秀さんが部屋を間違うとも思えないけど、こうなったからには看病してあげよう。
膝枕をやめようとしたらごねられたので、足を伸ばして座りなおした。
「貸しひとつですからね、光秀さん。
それに体調が悪い時に耳かきはできません」
中耳炎になったら大変だ。
光秀「貸しはあとで返そう。あと、俺が熱を出しているのは誰にも言うな。半刻したら起こしてくれ。
耳かきはあとの楽しみにしておく。……忘れるなよ」
布団にくるまりながらなかなか寝ようとしない。
仕事人間もここまでくると病気だ。
「はいはい。わかりましたから早く寝てください」
(光秀さん、そんなに耳掃除してもらいたかったのかな)
意外な人物からの耳かき依頼は、後日持ち越しになった。