第25章 耳掃除をしよう(安土勢)
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安土の武将で制覇していないのは信長様、光秀さん、慶次だ。
慶次はともかく、信長様と光秀さんは耳掃除なんて興味はないだろうと考えていたある日。
光秀「舞、何やら最近面白いことをしているそうだな」
朝一番で光秀さんが訪ねてきた。
布団から半身起こして伸びをした姿勢のままピシリと固まった。
女中「み、光秀様、姫様はまだお支度が整っておりませんので…」
女中さんがなんとか追い返そうとしてくれているけど、光秀さんはどこ吹く風で聞き流し、断りなしに部屋に入ってきた。
「え?え?み、光秀さん、ちょ、ちょっと待って~~~」
寝起き顔を見られるのが嫌で布団の中に隠れたら、掛け布団を取り上げられてしまった。
「や、ちょっと!」
慌てて乱れていた寝間着を直し、露わになっていた足を隠す。
胸元も直し、髪を撫でてなんとか体裁を繕った。
その様子を涼しい目で見られて、なんとなくムカっとくる。
(あきらかに寝起きなんだから出直してくれたって良いのに)
目が合うと光秀さんは薄く笑い、今のところ何か企んでいる様子はない。
夜が似合う人だけど、こうして朝日を浴びて笑う姿もなかなか良い。
光秀「噂は前々から聞いていたが、俺は舞が寝ている時間にしか城に居ないものでな。
今日は久しぶりに日の高いうちに登城したから、余計な仕事が入る前に舞に会いに来た」
噂ということは、この人も耳掃除をしてもらいたくて来たんだろうけど……
「日が高いうちって、まだ上り始めたばかりじゃないですか」
何で寝起き姿の、どうしようもない姿を光秀さんに見られなくてはいけないのか…。
光秀「起きているお前にずっと会っていなかったからな。いけなかったか?」
「気持ちはありがたいですけど早すぎです」
(待って…?『起きているお前に会っていない』ってことは、寝ている私には会っていたってこと!?)
ひっかかりを覚えた部分をよく考えてみると、そういうことになる。