第15章 secret word(政宗)
光秀「先に謝っておいただろう?」
「先でも後でもだめです!!
もう……政宗も政宗だよ。なんで毎回お酒の匂いに気が付かないの?せっかく『え』を楽しみにしてたのに、ひどいよ……」
ぐすっと鼻をすする。
厨で口づけしてもらってから、ずっと触れて欲しいのを我慢していたのに寝ちゃうなんて。
もてあましている熱をどうしたら良いんだろう。
手には政宗の温もりがあるのに、その熱は穏やかで燃えるような熱さにはならない。
家康「泣くほどじゃないでしょ。明日の夜にすれば?」
「今日が良かったの…」
光秀「泣くほど楽しみにしていたとは知らなかった、悪かったな」
「ぐす……」
秀吉「光秀っ、なに舞を泣かせてんだっ!」
「……秀吉さん、その調子で光秀さんにお説教三時間コースでお願い」
秀吉「は?さんじかんこおすってなんだ?」
「つまりは足がしびれて動けなくなるくらい長々、延々とお説教してってこと!」
近くで話を聞いていた家臣達が小さく吹き出した。
信長「ずいぶんと怒り心頭だな、舞。500年後の着物とは面白そうだ。
今度貴様が描いた絵を持ってこい」
(うそ……絵なんて一枚もないよ)
信長様に対して嘘でしたとは言えず、冷や汗をかきながら返事をした。
「……はい……わかりました」
―――――
信長様に断りをいれて中座して、政宗を部屋に運び込んだ。
期待していた夜をお預けにされて身体が火照って仕方がなくて、信長様に見せる用の絵を描いて過ごした。
「こんの~~~~!幸せそうな顔で寝ちゃって、悔しいなぁ!」
政宗は赤い顔をして安心しきったように寝ている。
墨をつけていない細い筆を手に取り、赤くなっている頬をコチョコチョとくすぐってみた。
政宗「ん……」
政宗の眉間に皺が寄って『うるさい』とでも言うように顔を横に振っている。
「呑気な顔……いつも私の方が呑気だっていわれるのに、逆だね」
政宗はいつも私を『守ってやる』って言ってくれる。
でも今は私が守ってあげなきゃいけないと思わせる無防備さがあった。
政宗は嫌がるだろうけど、こんな夜もたまには良いかなと思う。
「お仕置きだ!ふふっ」
もう一度筆で悪戯をしてから絵にとりかかった。