第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
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「ん……」
頬に何かがザラッとあたって意識が浮上した。
視界には乾いた砂粒が映っている。砂と言っても山の砂じゃなく砂浜にあるような……。
そこまで考えが至ったところで、耳が波音を拾う。
規則的に寄せて返す波の音。
潮のかおり。
「え……」
驚いて顔をあげると、そこは茶屋どころか城下でもなくて、美しい砂浜だった。
朝日の白い光を受けて、海が銀色に輝いている。
眩しさに目を細めながら朝の風景を茫然と眺めた。
「っ!そういえば誰かが手を掴んでくれたよね」
握られた手の感触を思い出して慌てて周囲を確認した。
横たわっていた私の足元に、光秀さんと謙信様が倒れていた。
「二人とも手を掴んでくれたんだ。ありがとうございます…」
私が助けてと叫んでからワームホールに捕らわれるまで数秒だっただろう。
あの一瞬で判断し、手を掴んでくれた二人に感謝した。
目を覚ました時に一人じゃなくて良かった。
遠くに見えているホテルの外観は、海に面した窓が大きくとられている様子からビジネスホテルではなくリゾートホテルみたいだ。
私には馴染みのないヤシの木のような…とにかく南国風の植物が至る所に植えられている。
「現代の…日本なのかな」
とにかく現代に居るのなら場所の把握やらその他もろもろ、私が動いた方が良いだろう。
(何か手掛かりはないかな…あ、人が居る!)
手にビニール袋を持ち、ゴミ拾いをしている男性がいたので走り寄った。
「すみません!」
着物姿の私に話しかけられて、男の人は驚いている。