第38章 息が止まるその時に(謙信様:誕生祝SS2025)
例え最初からやり直さすことになろうとも、私が知る謙信様が居なくなっていたとしても一緒に生きていこうと交わした約束は、私の中で生き続けていた。
(もう謙信様に出会う前の私には戻れない。
私はあの方の隣に居たい)
こうして記憶を取り戻してしまったら最後、謙信様と私を隔てる時の流れを思うと息が苦しい。
(明日を逃しちゃいけない、絶対!)
「これから長い旅に行ってきます。
連絡がつかなくなって心配だろうけど、私は元気でやっていくからあまり心配しないで。
離れてもずっとお父さん、お母さん、お姉ちゃんのこと想ってるから」
最後のお別れになるかもしれないから気持ちを込めて言うと、大げさとおもったのか家族が呆気にとられている。
母「急にどうしたの?」
父「長い旅って2泊3日なんだろ?大げさだな」
姉「なんなの?スマホの電波がない山奥にでも行くわけ?」
「いーの。ちょっと挨拶したくなっただけだから。
じゃあ、京都に行く方法を見つけたんだけど、今から出ないとダメみたい。
いってきます!」
私がタイムスリップした後、家族がどれほど心配しただろうといつも気がかりだったから、これが現実か夢かわからないけどお別れができて良かった。
このあと私が行方不明になった時、このお別れの言葉が家族の慰めになると信じて家をとび出した。