第37章 姫の年越しシリーズ(2025年)・1月1日
好きな人がどんな人か聞いた→答えづらそうにしていたから無理に答えなくてもいいと言い→信長様に幸せになって欲しいと言ったら→私が天守に呼ばれた。
(んん?つまりそれって…)
そういうこと!?
ばっと顔を上げて信長様を見ると、彼はもう新しい足袋を履き終わって立ち上がったところだった。
意思確認したくても視線を合わせられない状況に焦る。
(違う?違わない?勘違い?)
1人混乱している間に信長様は明かりを受け取ってお付の人達を解散させた。
2人きりで少し歩いていくと、真っすぐ進めば天主、右に行けば私の部屋という分岐点に着いた。
「初詣に連れていっていただきましてありがとうございました。
ところでさっき天主に誘われた件ですが、どうして私を誘ったのですか?」
信長「貴様は阿呆だが勘は悪くないはずだ。
わざわざ俺に問う必要があるか?」
(くっ、どうせ私はドがつくほど阿呆ですよ!
こんなときくらい甘い雰囲気だしてくれてもいいのに!
それとも私の勘違いなのかな)
この方と甘い雰囲気でどうにかなるとか、永遠にこなさそうだ。
とりあえず今のままでは確信が持てないので、頭の中の退却ボタンを選択した。
「私は阿呆すぎて信長様のお相手はできません。
ではおやすみなさい」
どっちにしろ今夜は急すぎるし考えたいこともある。
礼を言って帰ろうとした頭をガシリとわし掴まれた。
「アイタタタタタターーーー!!」
信長「逃がすと思うか、この愚か者。
部屋には戻さん」
「イタタタ!て、天主に行きますから手を離してくださいっ」
涙目で言うと大きな手はスッと離れた。さっきまで私の手を温めてくれた手と同一とは思えない横暴さだ。
「女性になんてことすんですか!ひどいです!
行きますけど指1本さわんないでくださいね?
もし触れたらくまたんを没収して、手作り甘味はやめます、フン!」
不愛想な顔の端っこに悔しさを滲んでいるのが見えて、私はシメシメと笑った。
(こんな間接的な告白じゃなく好きだってちゃんと言ってもらえるまでお触りなしにしてもらおう。
急だから付き合う前によく考えたいし)
……そう考えていた私は相当甘かった。