第37章 姫の年越しシリーズ(2025年)・1月1日
「信長様っ、これでは提灯が持てません」
信長「付き人に持たせておけば良い。それが奴らの仕事だ。
舞の仕事は針子であろう?この手に凍傷を負ったらどうする気だ」
「このくらい、せいぜいしもやけです」
そう言いながらおみくじの文面を思い出た。
(冷えに注意ってこれのこと?って気のせいだよね、早速すぎる)
待ち人近くにあり。
優しい恋人ができますように。
思わぬ者と恋愛成就。
自分の願いとおみくじの文面がリンクして頭の中をぐるぐる回っている。
(ちょっと幻想的な雰囲気で引いたおみくじだからって真(ま)に受け過ぎだよね)
普通が1番と言っておいて信長様はこの世で1番普通じゃなくて偉大な方だ。
『思わぬ人と恋愛成就』とあっても限度がある。
(今は優しいけど、基本厳しく怖い人だし。
あ、でも可愛いものが好きだよね、きっと)
くまたん、大福、豆乳プリンを気に入っているのを見れば、きっとそうだ。
意外な面もあるけどこの方と恋愛成就というのは恐ろしく現実味がない。
信長「しもやけとて油断すれば指先が不自由になる。大事にしろ」
「わかりました。不注意で申し訳ありません。
……ところでご住職には何を確認されたのですか?」
信長「悪い運がひっくり返ると書いてあったが良い運までひっくり返るか確認しただけだ」
大凶で良い運だったのは健康面と恋愛成就だけだ。
信長様はそれをひっくり返したくなかったということだろうか。
(神仏を信じないって言ってたのに、おみくじの内容が引っかかったってこと?)
そういえば私を験担ぎにしているのもよく考えればおかしなことだ。神仏を信じず他力本願を嫌う信長様が、何故験担ぎなどと言い出したのか。
武将だから運だけは信じているのかなと矛盾に首を傾げた。