第37章 姫の年越しシリーズ(2025年)・1月1日
酔った男「かーーーーーっ!!!秀吉の旦那、さっきから見てると甘酸っぺーことしてんな!
うちから砂糖持ってきてスダチをしぼりてぇとこだな」
横で奥さんと思わしき人が『なに秀吉様の邪魔してんだいっ!』と肘でつついている。
確か乾物の商(あきな)いをしている人で、さっき挨拶した時も顔が赤かったから多少酔っているんだろう。
ここまで大っぴらに冷やかされると『私達そんなんじゃないですっ』という定番の言い訳も出てこない。
「えーと…」
相手は酔ってるしなんて言おうか考えているうちに、苦笑いを浮かべた秀吉さんが先に動いた。
秀吉「親父さん、飲み過ぎだ。こいつは…」
(あ………)
『こいつはそんなんじゃない。妹分だ』
そう言って何度も関係を否定されてきた。今日も同じだと胸がキュッとなった。
恋人同士みたいに手を触れ合わせて、くすぐられて。
そんな甘い夢が終わる時がきた。
乾物屋の主人から私へ戻ってきた榛色に温かい色が宿る。
秀吉「こいつは俺にはもったいないくらいの女だから、兄で居るしかないんだよ」
(え………いま、なんて…?)
びっくりしている私をよそに乾物屋の主人は呆れたように首を振った。
乾物屋「安土一のモテ男がなに言ってんだい!
秀吉様にもったいねえなら、舞様のお相手はこの世に居ねえことになるじゃねえか!
舞様が秀吉様を見る目といったら、そりゃあもう甘くてなぁ、舞様はどう思ってんだい?」
「え、え、私ですか!?」
(どう思ってるって、正直に言うなら『好きです』だけど……)
衆目集める中で自分の気持ちを訊ねられて戸惑う。
あちこちと目が泳ぎ、最終的に秀吉さんのところへいく。