第37章 姫の年越しシリーズ(2025年)・1月1日
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(ちょっとこれ、どんだけ並んでるのっ!?)
秀吉さんが連れて行ってくれた神社には初詣の人で長蛇の列ができていた。
鳥居をくぐるまで100メートル以上あり、その後も長い石段が続いている。
「秀吉さん、もう少し小さな神社やお寺はないの?
凄く混んでるから別のところに行こうよ」
秀吉「ここが一番すいてるって話だったから来たんだ。
他はもっと長い列ができてるらしいぞ」
現代よりも初詣の習慣が根付いていないって聞いていたからここまでの混雑を予想していなかった。しかし初詣は信長様の命令だから諦めて帰るわけにいかない。
「仕方ない、気長に並ぼうか。
つき合わせてごめんね、秀吉さん」
列の最後尾にならぶと秀吉さんに気が付いた人たちが『お先にどうぞ』と順番を譲ろうとしてきたけれど、秀吉さんも私も悪いからと断った。
(早めに済まそうと思っていたのにこれは時間がかかりそうだなあ)
暇つぶしになるものは無いし、ひたすら列が進むのを待っていると小さな子供たちが歌をうたいながら手遊びしている。
「ねえ、秀吉さん。あの手遊び、秀吉さんも知ってる?」
秀吉さんが子供たちの歌に耳を澄ませ、すぐに懐かしそうな顔で頷いた。
秀吉「田んぼのタニシが~♪ってやつだろ。
舞は知らないのか?」
秀吉さんが歌ってるのを初めて聞いた。いい声!格好良い!とドキドキしていると不意に両手を取られて心臓が跳ねあがった。
秀吉「子ども相手に遊ぶ時、知っておくといいぞ。
同じことの繰り返しだから直ぐに覚えられるはずだ」
時間はあまりあるほどあって、秀吉さんのレクチャーの元、戦国時代の手遊びを習うことになったのだけど……
秀吉「くーろとちゃいろの殻が~♪」
手遊びは確かに簡単だった。でも両手を握り合ったり手の平を合わせたり、何かと手が触れる回数が多く、私はそのたびに動揺させられた。
じゃんけんとは違うけれど手の形で勝負をして、勝った方が負けた方をくすぐるというのがルールだ。