第63章 受け継がれる命
そして時は経ち―――、
(………………ああ、良かった…。)
長引いた出産の末、産婆は元気な男児が産まれた事を伝えた。
「杏寿郎さん…、いっ緒にたんれん…できますね。」
菫は朦朧としながら、側に来た杏寿郎の顔を焦点の合わない瞳で見つめた。
杏「…菫、大丈夫か。」
何となくその瞳が危うい気がしてそう問うた。
すると、菫が何も聞こえていないようにゆっくりと首を傾げる。
杏寿郎の血の気は一気に引いた。
杏「意識がはっきりとしていない!母体はもう安全なのではなかったのか!!」
そう隣室に居る産婆を呼びながら後ろを振り返ると、菫の中から夥しい量の血が出ていた。
杏(血を失い過ぎている。)
杏寿郎はそう思うと消毒した針と糸を使い、傍観する産婆の前で生傷が絶えなかった長年の勘を頼りに手探りで血の出処を縫った。