第63章 受け継がれる命
千「もう…開けたら閉めてください!」
杏「いや、君の体が優秀だったんだ!」
槇「ああ、本当によくやった!」
菫は千寿郎に礼を言うと、興奮気味の二人に止められながらも上体を起こした。
「流石にこの待遇はやり過ぎです。まだお腹が膨れている訳でもないのに…。」
槇寿郎は子が産まれるまでを見てきた一人であったが、何せ妻の瑠火は日頃から臥せている事が多かった。
杏「…それは………、」
槇「だが…、万が一の事を考えた方が良い。」
千「僕は菫さんが正しいかと…。父上と兄上はお腹が大きい女性が乳飲み子をおんぶして店番をしている姿を見たことが無いのですか?」
その言葉を聞いた杏寿郎はきゅっと口を結ぶと自身の過保護さを認めた。
杏「菫と千寿郎の言う通りだな。」
そうして菫はなんとか軟禁から解かれて自由の身となり、腹が大きくなるまでは心配されながらも家を守ったのだった。