第61章 祝いの日
圭「……だが…………、」
「圭太さん。私も貴方の幸せを願っております。圭太さんがいらっしゃらなければ杏寿郎さんの想いを受け入れなかったかもしれない。清水家に帰ろうとしなかったかもしれない。お願いです。」
菫はもう一度照子の頭をそっと撫でると圭太を真っ直ぐに見つめた。
「照子さんは可愛らしいだけでなく、私の事を叱ってくれた事もありますし、とてもしっかりしていらっしゃいます。そして、甘え上手です。」
そう言って菫が『好みでしょう?』という顔をすると、圭太は居心地悪そうに視線を横に外しながら頬を染めた。
それを確認した菫はにっこり微笑んで照子の背を押す。
「では後はお二人でお話ししてきて下さいな。」
照「あ、あのっ」
圭「菫…、」
戸惑う二人に菫は優しい笑みを向けた。
圭「………………。」
照「………………。」
その笑みを見た二人は肩の力を抜き、そろそろと視線を移して見つめ合う。
そして圭太は眉尻を下げて優しく微笑み、照子ははにかみながら少しぎこちなく微笑み、改めて名乗り合ったのだった。