第61章 祝いの日
照「あ……、薬を…、」
耳まで赤くなった照子を見て圭太は微笑ましそうに目を細める。
そして菫に困った様な笑みを向けた。
圭「ありがたいけどそんな気遣いはしなくて良い。俺はお前が幸せになれば満足なんだって言ったろ。」
「待って。これ程良いお話はないわ。」
菫はそう言うと照子の頭を撫でる。
「先程言った通り、照子さんの家は薬屋です。なので、」
照「お姉様…、あの、でも、私の家族は…、」
照子の困った顔を見て菫は優しく微笑んだ。
「ええ。圭太さん、照子さんは藤井家の一人娘なんです。跡継ぎの息子さんがいらっしゃいません。お婿さんを取らなければなりません。それなのに "お兄様" や "お姉様" がお好きです。」
菫に求めた関係性から異性の好みも知られていた事に照子は顔を赤くさせた。
一方、兄気質の長男で、継ぐ家がなく、薬の知識がある男性である圭太は少し目を見開きながら照子を見た。
照子は照子で菫が可愛がった通り、愛らしい子だ。
圭太も勿論、全く好意を抱かなかった訳ではない。