第61章 祝いの日
三度お神酒を酌み交わした二人は生涯を共にする誓いを立てる。
そして、これからの決意と誓いの言葉を列席者の前で伝えた。
二人ともさっぱりとした性格だった為、短すぎる言葉に皆は若干物足りなさそうな顔をした。
そんな親戚を尻目に杏寿郎、菫、そして両親の順に酒は注がれていく。
杏「少なめにして貰ったか。」
杏寿郎に小さな声で確かめられると菫は少し困った様に笑った。
「ええ。祝言で寝てしまっては一生笑われてしまいますもの。」
それに杏寿郎も小さく笑うと合図と共に全員が同時に飲み干す。
(…これで煉獄家と清水家は一つの家族に…。)
菫は震える息を吐くと煉獄家の方を向いて目が合った千寿郎に微笑んだ。
そして、挙式に参列した全ての者へ、感謝の気持ちを込めて三度頭を下げる。
菫は感無量で三度目の礼をした後、すぐに顔を上げられなかった。
ゆっくりと顔を上げるとまず何よりも先に杏寿郎を見つめた。
杏寿郎もまた菫が顔を上げるのを待っていた。
菫は杏寿郎の温かい笑みを見ると思わず涙を溢してしまった。
「これからもどうか、宜しくお願い致します。」
杏「ああ!こちらこそ宜しく頼む!!」
杏寿郎のいつもの太陽のような雰囲気に触れると、菫の心は夏の青空のようにすっきりとしてしまう。
そして、二人らしく只々微笑み合ったのだった。