第60章 初めての宴
すると後ろを歩く二人の男、角田と権田は視線を合わせて複雑そうな顔をする。
重國は杏寿郎の事を信頼していたが、それでも菫は大事な嫁入り前の娘で今夜は酒が出る。
それ故にこの太陽の様な笑みを浮かべる杏寿郎も見張りの対象に入っていたのだ。
杏「お二人は初めて酒を飲んだ時どうだったのだろうか!」
何よりやり辛かったのは、杏寿郎が気さくに話し掛けてくるからだった。
幸せそうな若い二人というだけでもやり辛いのに、杏寿郎の温かい笑顔は見張る者に罪悪感さえも抱かせてしまう。
角「自分達のことはお気になさらないで下さい。」
権「居ないものと思って頂いて良いので。」
そう言われてしまうと杏寿郎と菫は少し眉尻を下げる。
その顔を見た二人は再び心の中で深い息を吐いたのだった。