第60章 初めての宴
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「杏寿郎さん!!」
菫は清水家まで迎えに来てくれた杏寿郎の元へ駆け寄ると、危うく家族の前で抱き着きそうになった。
「…お迎えありがとうございます。」
菫のもどかしそうな顔を見た杏寿郎はその考えを察し、眉尻を下げながら笑い声を上げた。
その身は臙脂色の着物と紺の袴に包まれている。
菫は淡い藍色の着物に白地の帯だ。
杏「気にするな!それより久し振りだな!!」
「はい。お久し振りです。とても長く感じました。」
杏寿郎はその言葉に目を細めて微笑むと後ろの家族に頭を下げる。
杏「お久し振りです。必ず無事に送り届けますのでご安心下さい。」
そう言われると重國は申し訳無さそうに若干眉尻を下げた。
重「君の事は信頼しているが何しろ酒の席だ。君もずっと菫に付いている訳にも行かないだろう。部下を二人付けさせてくれ。」
その発言に晴美と蓮華は眉を寄せたが杏寿郎と菫は快諾した。
「では行って参ります。」
杏「失礼します!」
そうして二人は恰幅の良い二人の男を連れて清水家を出発したのだった。