第59章 それぞれの
蓮(それは説明じゃない、懺悔だわ。誤解を確信に変えてしまう。)
蓮「お祖父様、お祖母様。お姉様が帰るのを恐れた理由は脅されていたからです。」
「脅されてはいないわ。」
蓮「お姉様は少し黙ってて下さいね。」
祖父母と良い関係を築けていると自負していた蓮華は、菫の説明に少し多めな補足をしていった。
そして、それを聞き終える頃には祖父母は菫を同情するような目で見るようになったのだった。
(…見習わないと。言い訳をするのには抵抗があるけれど杏寿郎さんの為でもあるのだから…。)
菫はそう思って決意を固めると隣の蓮華に視線を遣る。
「蓮華、ありがとう。少し美化し過ぎている気はするけれど気持ちは嬉しかったわ。」
蓮「美化していません!」
蓮華が頬を膨らませると菫は目を細めて蓮華の頭を撫で、その顔のまま祖父母に視線を移した。
「この子の主観的感想については同意しかねますが、説明してくれた事は確かに事実です。」
祖父母は発言より何より、その柔らかい顔に目を見開いた。
それを見て娘達を黙って見守っていた晴美が微笑む。
晴「最近はこの顔も珍しくないんですよ。」
蓮華の説明を聞いた後なら、それが誰の影響なのかは容易に察しがつく。
祖父母は嬉しそうに微笑み合うと、今度は杏寿郎についての質問をし始めたのだった。