第58章 休養―其の弐
善「炭治郎?禰豆子ちゃん待たせるなよな。」
炭「あ、うん…!煉獄さん、失礼します!」
杏「うむ!!」
杏寿郎は腕を組んで微笑みながら見送ると、今度は善逸に視線を移した。
杏「君には一番驚かされたかもしれない。」
善逸は無限城で誰とも合流せず、元兄弟子である獪岳、上弦の陸を探し出して人知れず首を斬っていたのだ。
その話題になるといつもの騒がしい雰囲気が嘘のように静かになる。
善「俺、自分はできない奴だって…そう思ってたけど、それでも俺がやらなきゃって思ったんです。何がなんでも、出来なくてもやるんだって…。」
二人切りの時に師範について聞いていた杏寿郎は眉尻を下げて優しい表情を作った。
杏「立派にやり遂げたな。見上げた男だ。」
その言葉に善逸はこそばゆそうな笑みを浮かべながら杏寿郎を見つめ返した。
姿の見えない伊之助は『荷物なんかねぇ!!』と言って禰豆子に懐いて付き纏っている。
善逸はそれに気が付くと荷物を手に駆けて行った。
杏(本当に寂しくなるな。)
杏寿郎はそう思いながら縁側に出て庭を見つめた。
此処で過ごした時間は菫と過ごした時間と殆ど等しい。
炭治郎達が出ていくのを見て菫が出ていく姿を想像した。
杏(…一緒になるまでの辛抱だ。)