第58章 休養―其の弐
(上体を保っていられない…。)
そう思うと行儀が悪いと分かりつつ、床に腰を下ろしてベッドに組んだ腕を乗せる。
「杏寿郎さん…。」
菫は暫く眠気に抗っていたが、とうとうそう申し訳なさそうに呼ぶと腕の中に顔を伏せてしまったのだった。
―――
杏「………………。」
杏寿郎は目を覚ますと手に温もりを感じ、ぎゅっと握りながら視線をそちらに移した。
そしてすぐに頬を緩ませる。
杏「……ああ、愛らしいな。」
ベッドに寄りかかりながら寝てしまっている菫は杏寿郎の手をしっかりと握っていた。
杏寿郎は少しの間穏やかに息をする菫を見つめていたが、風邪を引かせてしまうと思うと優しく肩を揺すった。
杏「菫、菫。体を壊してしまうぞ。きちんとした所で寝てくれ。」
菫は眉をきゅっと寄せると瞼を薄っすらと上げる。
「……離れたくありません…。」
まだ意識がしっかり浮上していなかった菫は、そう我儘を言うと杏寿郎の手をぎゅっと握り直した。