第58章 休養―其の弐
「…要さん。」
昼過ぎ、菫が眠っている杏寿郎の顔を眺めていると要が戻ってきて窓枠に止まった。
要「返事ヲ預カッタ。」
菫は主を思い遣って小さな声を出した要を見て微笑む。
「随分と早かったですね。急いでくれたのでしょう。お豆は倍にしますね。」
そう言ってポケットから豆を取り出すと要は嬉しそうに飛んで来た。
(…お父様の字だわ。お仕事があったでしょうに…きっと私達からの報せを待っていらしたのね。)
そこには杏寿郎の体を思い遣る言葉と、早く二人に会いたいという旨が書かれていた。
菫も早く良くなってもらいたかったが、そうなれば杏寿郎は煉獄家へ帰り、菫は清水家で過ごす事になるだろう。
すると『少しズルをして長く留まれないだろうか。』などと親不孝な事を考えてしまった。
(いけないわ。煉獄家へ嫁げば一緒にいられるのだから……あれ…?)
菫は手紙がもう一枚ある事に気が付いて首を傾げた。