第57章 闘いを終えて
薬によってもたらされたのは鬼のような強さだけではない。
流石に腕が生えたり傷が治ったりなどはしなかったが、それでも命を保とうとする力が伸びていた。
強くなった力ばかりが目立っていたが、本来では死に繋がりかねない傷を負ってもなお激しく動き続けられていた事も重視すべき点だったのだ。
杏「 "きちんと" 回復の呼吸を使え!!薬の効力が切れた!!!」
杏寿郎は柱以外のまだ混乱している隊士達にそう助言した。
「杏寿郎さん…必要がありましたら私が代わりに言いますので…。」
菫が泣きそうな声でそう言うと、杏寿郎は冷や汗を流しながらも眉尻を下げて微笑んだ。
杏「すまない。次は頼ると約束する。なのでそうあまり心配そうな…顔を、」
「…っ」
杏寿郎は菫を気遣う言葉を口にしながら気絶してしまった。
「きょ、うじゅろ、さん……。」
菫は杏寿郎の上体を支えながら頬に手を当て、改めて体を見つめた。
本当に酷い傷だった。
菫は無限城内を飛び回る鴉から、杏寿郎が無惨と対峙する前に上弦の壱を相手にしていた事を聞いていた。