第55章 柱稽古
杏「今からとても私的な事を言う!!鍛錬中には持ち込まないので許してくれ!!!」
(…まさか……、)
菫はハッとすると杏寿郎に駆け寄った。
「え、炎柱様、それは」
杏「俺の屋敷に仕えてくれている隠は俺の婚約者だ!!!」
その言葉に目を丸くした隊士達が菫を見る。
菫は戸惑ったが、杏寿郎の気持ちを汲むと、なるべく動揺を悟られないように背筋を伸ばした。
杏「だからといって特別に接して欲しい訳ではないが…そうだな!!この際全てはっきり言おう!!手を出さないでくれ!!以上だ!!!」
隊「「「……………………。」」」
隊士達は呆然とした。
杏寿郎は『清く尊い』という共通認識を持たれている。
加えて強い使命感を持っている煉獄家の出であるが為に、鬼殺以外の事を考えているイメージすらない。
それが婚約者がいて、更に『手を出すな』と牽制までしたのだ。
そのギャップに皆は面食らってしまった。
一方、菫は背筋を伸ばしながらも頬を赤くさせていた。
そして頭巾があって本当に良かったと思った。
そんな皆を置いてきぼりに、やはり切り替えが速い杏寿郎は箸を持つと芋が明らかに多すぎる芋ご飯を頬張り、『うまい!!!』と笑顔を浮かべたのだった。