第55章 柱稽古
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耀哉の屋敷までの道中、刀鍛冶の里で親しくなった蜜璃と炭治郎は兄弟の話で盛り上がり始めた。
杏寿郎はそんな二人を見て微笑みつつ、自身の家族に想いを馳せた。
杏(やはり最終決戦は近いのだろうか。無事終えられたらすぐに父上と話をしよう。次こそきっと上手くいく。千寿郎の話もゆっくりと聞いてやりたい。そうしたら菫を紹介して…、)
膨らませすぎてはならないと分かりつつ、杏寿郎の胸にある期待は大きくなっていく。
杏(体を慣らすのに忙しくて菫のご家族にも暫く会えていない。手紙では決戦に向けて集中してくれと言って下さったが、菫にだけでも会いたいというのが本音だろう。)
杏寿郎は『行きたいと思えば好きに清水家へ行って構わない』と言ったのだが、菫は杏寿郎を置いて実家へ行こうとしなかった。